腕の振りから、全身の歩行を復元する。
手首のセンサーが観測できるのは腕の動きだけです。しかしその腕の振りは、骨盤・体幹・脚の周期運動に駆動されている。gait は全身歩行モデルが生成する「はずの」手首信号を合成し、実測との差を最小化することで、観測されていない全身の運動を逆算します。
- 6ch
- INPUT / ACCEL+GYRO
- 51.2Hz
- SAMPLE RATE
- 46dof
- MODEL PARAMETERS
- 45
- OPEN DATASETS INDEXED
歩行は最も安価な生体指標で、手首は唯一ずっと着けていられる場所だ。
歩行速度は、高齢者の生存率と関連する指標として大規模なプール解析で報告されています。歩行の変化は、認知機能やフレイルの進行を映す窓としても研究が積み重なってきました。
問題は測り方でした。従来の歩行解析はモーションキャプチャ室、あるいは体幹や足に貼りつけるセンサーを前提としています。どちらも「測ろうと決めた日の数分間」しか捉えられません。
一日中、何日も、生活の中で身につけられているセンサーは事実上ひとつだけです。手首です。ここから全身の歩行が出せるなら、歩行解析は研究室の外に出ます。
歩行速度と生存率の関連: Studenski S, et al. Gait Speed and Survival in Older Adults. JAMA. 2011;305(1):50–58. — 本プロジェクトの成果ではなく、外部の先行研究です。
逆問題を、順問題の反復で解く。
手首信号から関節角度を直接回帰するのではなく、解剖学的に妥当な全身モデルを前向きに走らせ、その出力が実測に一致するまでパラメータを動かします。得られる解は常に「実在しうる歩き方」です。
- 01
観測
手首装着デバイスから6軸(加速度・角速度)の時系列を取得します。重力成分の分離と帯域通過を経て、歩行区間を検出します。
- 02
順モデル
ケイデンス・ストライド長・腕振り・体幹傾斜などをパラメータに持つ全身歩行パターンを生成し、順運動学で骨格の各節を動かします。
- 03
仮想センサー
モデル上の手首位置に仮想IMUを置き、その剛体運動から「このモデルが歩いていたら手首が観測したはずの信号」を合成します。装着傾きも同時に扱います。
- 04
最小化
合成信号と実測の差を目的関数として、生体力学的な可動域の内側でパラメータを最適化します。収束した先が推定された歩行です。
出てくるのは数値ではなく、動く身体そのもの。
最適化が返すのは歩行パターンの完全なパラメータ集合です。そこから全身の関節軌道が再構成され、ビューアで再生・検証できます。
cadenceHzstride_lengthmarm_swing_ampradtrunk_leanradvertical_ampmlateral_ampmhip_swing_ampradknee_swing_amprad加えて、骨盤・体幹の回旋、肘屈曲、前腕回内外、踵接地の衝撃応答などがモデルに含まれます。
既知のパラメータを、どこまで取り戻せるか。
既知の歩行パラメータから信号を合成し、それを入力として推定を回して真値と比較する往復テストを回帰試験として保持しています。以下はそのテストが実際に課している許容誤差です。
| quantity | tolerance |
|---|---|
| ケイデンス | < 0.05 Hz |
| 腕振り振幅 | < 3.0° |
| 体幹前傾 | < 4.0° |
| 上下動 | < 0.005 m |
合成信号に対する往復精度であり、実被験者データに対する臨床的妥当性を示すものではありません。実データでの評価は継続中です。
手首歩行解析の、共有された基盤をつくる。
手法だけでは分野は進みません。同じデータ、同じ評価軸、再現できる実装が要ります。gait はその3つを一箇所に集めることを目指しています。
誰が、何で測っているか
歩行研究で実際に使われている記録装置・参照系・公開アルゴリズムと、注目すべき研究室の一覧。記載は一次文献で確認したものに限り、未確認の範囲は「穴」として明示しています。
開く公開データセットの索引
手首IMUで歩行を含む公開データセットを、装着位置・サンプリング周波数・正解ラベルの有無・入手手続きで横断的に引けるようにします。各項目は一次情報で確認し、確認日を添えています。
開く再現可能な評価
同一の分割と指標で手法を比較できる評価スイート。歩数・ケイデンス・歩行速度をイベント単位で採点します。
論文と再現コード
本基盤から出た論文と、その図表を再生成できるコードを対にして公開します。
ライブラリと API
Python ライブラリ、CLI、FastAPI サーバー、そしてこのビューアまでを含めて公開しています。